湖のくまさん 実際に熊は生息していないのでご安心を。(12日目/テカポ)少し話が前後するが、マウント・ジョンを下山し、湖に沿った道を歩いている最中、後ろからにぎやかな声が聞こえてきた。
中年の夫婦だが、やたらと声が大きい。 その上、年の割に、やたらと歩行スピードが速い。
俺も歩行スピードを上げる。 だがしかし、中年夫婦も、森のくまさん並についてくる。差が広がらない。
ならば本気で引き離しにかかろう! 競歩的なスピードで歩くと、流石に見えない距離にまで引き離すことができた。
町の入り口にさしかかったところで、自尊心を守りきった安堵感に浸り、湖を見ていた。 なんか浮いてる。 カモ・・・じゃない。シルエットが違う。 潜水すると、全然浮いてこない。 気になって数えると、90秒くらい潜っていることが分かった。
手に、俺のモバイルパソコンのクッションケースを持っていた。 モバイルパソコンで動画を撮影したとき、落としていたみたいだ。 ある日くまさんに出会って追いかけられた、どこかのお嬢さんと同じ状態だ。 ♪お嬢さん お待ちなさい ちょっと 落とし物♪ 俺の場合、たちが悪く、善意ある人たちから意味不明の自尊心で逃げていた。
自分の愚かさを恥じ、中年夫婦に深くお礼をした。
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